DNAと遺伝子の違い

DNAと遺伝子には、DNAが物質そのものであるのに対し、遺伝子はDNAに記載されている情報を指すという違いがあります。

DNA(デオキシリボ核酸)とは、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基で構成され、細胞内では2本のDNAが向き合ったらせん状の形をとっています。また、その塩基の並び方は塩基配列と呼ばれ、遺伝子とは、この特定の塩基配列により記載された情報を指します。

遺伝子は生体の材料となるタンパク質の構造を決め、使われる量やタイミングを調節する「体の設計図」であり、また親から子に伝わる「遺伝情報」でもあります。
DNAの全ての塩基配列に遺伝子の情報が載っているわけではなく、使われていない部分や、はたらきが判明していない部分もあります。

DNAを書類に例えると、塩基配列は文字が並んだ暗号文にあたります。
暗号文の中には、重要な意味を持つ文章である遺伝子が隠れていますが、意味のなさそうな文字の並びやまだ解かれていない暗号もあり、解読のため今も研究が続けられています。

人間や生物の体の特徴が子孫に伝わる現象である「遺伝」や、遺伝では両親からそれぞれの「遺伝子」を受け継ぐと考えられることは、1865年のメンデルによる発見が1900年頃から再評価されるにつれ明らかになっていきました。
しかし遺伝子がDNAに記載されていることは、その後40年ほど経ってから、細菌やファージウイルスを使った分子生物学的実験によってはじめて突き止められました。
そして現在では、ヒトゲノム計画の達成により、ヒト一人が持つ全てのDNA塩基配列、約30億文字のほとんどが解読されていますが、そのうち遺伝子が書かれているのは1%程度であることがわかっています。
さらに、その遺伝子のなかのわずか1塩基配列、すなわち1文字が違うだけでも、病気へのかかりやすさや体質に影響が出ることがあるのです。

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