顕性遺伝(優性遺伝)とは

親から子へ遺伝子が引き継がれるとき、例えば人間の場合には母方と父方のそれぞれから1つずつ、対になる遺伝子を受け継ぎます※が、両親から受け継いでいるにもかかわらず、母方あるいは父方から受け継いだ片方の形質(形状や性質)のみが現れるという場合があります。このように、ある形質を決める1対の遺伝子のうち、より強く現れる方の形質がもつ遺伝様式を「顕性遺伝」と言います。
※男性における性染色体上の遺伝子を除く

遺伝の法則は、遺伝学の祖と呼ばれるメンデルによって1800年代に初めて報告されました。
メンデルの実験の一つはエンドウマメの種子の形が「丸」か「シワ」か、という形質に着目したものでした。いま、丸い種子が持つ一対の遺伝子型を「RR」、シワの種子が持つ遺伝子型を「rr」とした場合、これらを掛け合わせた次の世代の遺伝子型「Rr」の種子は「丸」くなります。これは、「R」と「r」が一緒に存在するとき、形質として「r」よりも「R」が現れやすいためです。つまり、どちらも種子の形状を決める要因でありながら、現れる形質に対する影響が対等ではないのです。「Rr」の形質が「RR」に似た形状を示すとき、Rはrに対して「顕性(dominant)」、rはRに対して「潜性(recessive)」であるといいます。

なお、遺伝の法則が日本に紹介されて以来、形質の現れやすさを元に「優性」「劣性」とされてきましたが、遺伝子に優劣があるという誤解や偏見を避けるため、2017年に日本遺伝学会より、「優性遺伝」は「顕性(けんせい)遺伝」、「劣性遺伝」は「潜性(せんせい)遺伝」に改められました。

「顕性遺伝」と「潜性遺伝」は比較的よく知られている遺伝様式ですが、例えば人間などの場合、遺伝子が常染色体上にあるか性染色体上にあるかでさらに遺伝の仕方(形質の現れ方)が異なります。 ある遺伝子が常染色体上に存在する場合、顕性遺伝する形質の遺伝様式は「常染色体顕性遺伝」とよばれます。

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