肥満と原因

肥満とは、脂肪組織に過剰な脂肪が蓄積した状態のことです。日本肥満学会では、BMIが25以上の場合を「肥満」、35以上の場合は「高度肥満」と定義されています。肥満に起因する健康障害は、糖尿病・高血圧・高脂血症など多岐にわたるため、予防するという意識を持つことが大切です。

肥満を引き起こす9つの原因

太る原因が食事や運動といった生活習慣にあることはよく知られていますが、睡眠や喫煙などが影響しているケースもあります。食べる量が多い、運動不足であるだけで肥満となるわけではないため、リスクに結びつく要因について、さまざまな角度から理解する必要があります。

1.食生活

食事から得る「摂取エネルギー」が、毎日の活動で使われる「消費エネルギー」を上回った場合、エネルギーが脂肪となって蓄積されていきます。特に、糖質摂取の割合が多い、あるいはタンパク質摂取の割合が少ない場合には、肥満になるリスクが高まります。また、エネルギー摂取量にかかわらず、早食いをすると肥満になりやすいことが明らかになっています。

2.運動習慣

運動量が多ければ、消費エネルギーが増加するため、脂肪として蓄積するエネルギーが少なくなります。一方、座っていることが多く不活発に過ごす時間が長いなど、生活における活動量が少なくなると、太りやすくなります。

3.飲酒

重度の飲酒をすると、お酒自体に含まれるカロリーによって、エネルギーの過剰摂取につながります。また、アルコールにより食欲が増進するという側面もあります。少量から中等量の飲酒であれば体重増加のリスクは上昇しませんが、重度の飲酒では肥満になりやすいことが明らかになっています。

4.睡眠

睡眠時間が短くなると肥満のリスクが高まることは、疫学研究からも明らかにされています。近年は、睡眠不足によって、食欲抑制ホルモンが減少し空腹感の増加が引き起こされることによって、肥満に結びついていくとされています。

5.喫煙・禁煙

日本において、重度の喫煙者は肥満リスクが増加すると考えられています。また、喫煙の期間が長く吸う本数が多い場合には、禁煙後に体重が増えやすくなります。しかし、禁煙に伴う体重の増加は、食事・運動面から抑えることが可能です。

6.社会心理・居住地域

ストレスなどの心理的要因は、食事・身体活動に影響を及ぼすことから、肥満にも関連します。また、社会的要因として、農村部では男性の肥満が増加している一方で、都市部ではやせ型の女性が増えているといった地域差もあります。

7.職業

労働時間の長さ、交代勤務、職階などが要因となり、食生活や身体活動などのライフスタイルに影響を及ぼし、体重に作用します。日本では、男性の管理職でウエスト・ヒップ比が大きくなるという報告があり、飲酒量の多さ、座位時間の長さに起因すると考えられています。

8.加齢・性ホルモン

加齢に伴い、エストロゲンやアンドロゲンといった性ホルモンが減少することにより、体脂肪が増加します。また、年齢とともに筋肉量が減少し、基礎代謝が低下することも、肥満になる原因の一つです。

9.妊娠による栄養状態

妊娠中の体重増加が著しい場合には、出生後の肥満リスクが高まります。また、妊娠中の喫煙、母乳栄養期間の短さも、肥満と関連があるといわれています。

肥満の原因は多様な要因の影響を受けます。食事や運動をはじめ、ストレス・多量飲酒・喫煙など、一見関係がないように思われるところにも原因が潜んでいます。肥満を防ぐことは、それに起因する健康障害の予防にもつながります。肥満のリスク上昇につながる条件に当てはまる場合は、早めに対策していきましょう。

監修

砂山 聡先生

砂山 聡先生

帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授(内科学)
水道橋メディカルクリニック院長
順天堂大学医学部卒。同大学医学部循環器内科講師を経て、2005年より現職。専門は生活習慣病および肥満症治療。
医学博士、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本肥満症治療学会評議員。
主な著書として「循環器と病気のしくみ」(日本実業出版社)、「肥満症診療ハンドブック」(医学出版社)など。

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