脂肪細胞の種類

肥満には「脂肪細胞」が関与しています。脂肪細胞には2つの種類があり、肥満につながる細胞と、肥満を予防する細胞があります。脂肪や脂肪細胞に関する正しい知識を持つと、肥満のメカニズムについて理解を深めることができるでしょう。

脂肪とは?

動植物に含まれる栄養素の一つです。脂肪は炭水化物やたんぱく質と並び、「三大栄養素」として位置づけられています。人間の体内に存在する脂肪には、中性脂肪、脂肪酸、コレステロール、リン脂質があり、中でも中性脂肪が多くの割合を占めています。体内で余ったエネルギーは中性脂肪となって脂肪細胞に貯蔵されます。
脂肪はエネルギー源として用いられる大切な栄養素であり、寒さや衝撃を防ぐ意味でも不可欠なものです。しかし、脂肪が過剰に蓄積すると様々な健康障害につながります。

脂肪細胞の分類

脂肪細胞とは、細胞質に「脂肪滴」という脂肪のかたまりがある細胞のことです。大きな脂肪滴が1つある単胞性脂肪細胞(白色脂肪細胞)と、中小の脂肪滴が複数ある多胞性脂肪細胞(褐色脂肪細胞)に分類されています。

白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞

脂肪細胞の多くは白色脂肪細胞であり、全身に存在します。白色脂肪細胞は皮下や内臓で余分なエネルギーを蓄積する役割を担います。特に脂肪がつきやすいといわれる下腹部や太もも、おしり、背中などには、白色脂肪細胞が多く存在しています。
一方、褐色脂肪細胞は、首や肩甲骨のあたりなど限られた部位に点在しています。細胞にミトコンドリアを豊富に含むため、脂肪を燃やして熱に変えることができます。したがって、エネルギーの貯蔵にかかわる白色脂肪細胞とは真逆の働きをしているといえます。
また、褐色脂肪細胞は新生児のときに多く、年齢とともに減少していきます。そのため、褐色脂肪細胞の減少が「中年太り」の原因の一つとも推察されています。

肥満と白色脂肪細胞の増大

白色脂肪細胞は、活発に脂肪の合成を行うと肥大していきます。ある水準までに達すると、細胞が大きくなるだけでは対処が難しくなり、細胞分裂によって数を増加させます。肥満の背景には、このような白色脂肪細胞の過剰な増加や肥大といったメカニズムがあることがわかっています。

特定の刺激で変化する脂肪細胞

褐色脂肪細胞は、UCP-1(uncoupling protein-1)というたんぱく質の働きによって熱を産生しています。褐色脂肪細胞に寒冷刺激や交感神経刺激を加えると、UCP-1の増加とともに細胞数が増加することが明らかになっています。また、本来は脂肪の貯蔵にかかわる白色脂肪細胞も、継続的な寒冷刺激によって褐色化することがわかっています。褐色化した白色脂肪細胞は「ベージュ細胞」や「ブライト細胞」と呼ばれ、熱産生に貢献します。褐色脂肪細胞の増加や白色脂肪細胞の褐色化は肥満予防に貢献することが期待されており、こうした現象に関する研究が進められています。

肥満に関与する2つの脂肪細胞は、脂肪の貯蔵と燃焼という正反対の働きをしています。肥満予防において、脂肪を燃焼させる働きを持つ褐色脂肪細胞の役割は重要となります。

監修

砂山 聡先生

砂山 聡先生

帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授(内科学)
水道橋メディカルクリニック院長
順天堂大学医学部卒。同大学医学部循環器内科講師を経て、2005年より現職。専門は生活習慣病および肥満症治療。
医学博士、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本肥満症治療学会評議員。
主な著書として「循環器と病気のしくみ」(日本実業出版社)、「肥満症診療ハンドブック」(医学出版社)など。

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