肥満に関連する病気

肥満になると、さまざまな病気のリスクが高まります。肥満と関連があるといわれる11の病気を知り、体重管理の必要性を考えましょう。

肥満に関連する病気

高血圧症
BMIが25kg/m2未満の場合と比較して、肥満者では高血圧の発症リスクが2~3倍になることがわかっています。過食による塩分摂取増加、インスリンの過剰な分泌による腎臓でのナトリウム再吸収増加、交感神経活性化などが高血圧発症のメカニズムと考えられています。

脂質異常症
脂質異常症のうち、「低HDLコレステロール血症」と「高トリグリセライド血症」は肥満と強く関係しています。過食や運動不足によって生じたエネルギーの過剰状態が、その原因です。放置すると動脈硬化のリスクが高まります。

糖尿病
肥満になるとインスリンの働きが弱まり、「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態になります。血糖値を十分に下げることができなくなると、糖尿病を引き起こす可能性が高まります。

腎臓病
腎臓では「糸球体」が体内の老廃物や水分をろ過しています。肥満の方は高血圧や代謝亢進の影響を受け、ろ過が過剰になるために腎臓病にかかるリスクが高まります。状態が悪化すると、末期の腎不全に至るケースもあります。

冠動脈疾患
内臓脂肪型肥満では、動脈硬化のリスクが高まります。心臓への血液供給が遮断されると、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患につながります。肥満や耐糖能異常、高血圧症、脂質異常症などがリスクを上昇させる原因となります。

脳梗塞
脳で動脈硬化を起こし、血管が詰まると、酸素や栄養を届けることができなくなります。肥満では、狭窄した太い血管に血栓ができる「アテローム血栓性脳梗塞」が多いといわれています。

高尿酸血症・痛風
プリン体の最終産物である尿酸が増えると、高尿酸血症や痛風を引き起こします。肥満の方は過食によってプリン体を過剰摂取するためにリスクが高くなります。特に肉や内臓、魚卵などプリン体を多く含む食事を続けている人は尿酸値が高まりやすくなります。

脂肪肝
肝臓では、脂肪酸から中性脂肪を合成・貯蔵し、必要に応じてエネルギーを放出しています。生成する中性脂肪が多くなった場合は、肝細胞に蓄えていきます。肝細胞に脂肪が多く沈着した状態を「脂肪肝」といい、肥満によってインスリンの働きが低下することが一因となります。

睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
満者では、睡眠中に突然呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群の合併が多くみられます。さらに高度の肥満によって気道が狭くなると、空気の通り道が狭くなるために、肥満低換気症候群を引き起こすこともあります。これらの結果、日中の傾眠や起床時の頭痛などが起こります。肥満は無呼吸の一因とされますが、一方、肥満に伴う健康障害や体重増加とも密接に関連しています。このため、睡眠時無呼吸症候群合併例においては、睡眠障害の管理・治療を併せて行なうことが大切です。

整形外科的疾患
体重が増加した状態で長期的に過ごすと「変形性腰椎症」や「変形性膝関節症」を引き起こす可能性が高まります。関節を支える筋力の低下といった側面もありますが、肥満によって骨や関節に大きな負荷が加わり続けることは大きな要因となります。

月経異常・妊娠合併症
脂肪細胞から分泌される様々な因子は、生殖機能にも影響しています。また、ホルモンの司令塔である視床下部にも影響し、生理不順や月経不順や不正性器出血などの症状を引き起こすことがあります。さらに肥満の妊婦は、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)や妊娠糖尿などの合併症リスクや、胎児の発育不良の一因ともなります。

肥満で高血圧や糖尿病になりやすいということはよく知られていますが、心疾患や脳梗塞など命にかかわる病気のリスクも高まります。病気になる前に、できるだけ早期から減量に向けて取り組むことが大切です。

監修

砂山 聡先生

砂山 聡先生

帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授(内科学)
水道橋メディカルクリニック院長
順天堂大学医学部卒。同大学医学部循環器内科講師を経て、2005年より現職。専門は生活習慣病および肥満症治療。
医学博士、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本肥満症治療学会評議員。
主な著書として「循環器と病気のしくみ」(日本実業出版社)、「肥満症診療ハンドブック」(医学出版社)など。

参考文献・資料

  • 日本肥満学会(編集). 肥満症診療ガイドライン2016(ライフサイエンス出版)

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