皮下脂肪と内臓脂肪

体脂肪には2つの種類があり、蓄積部分によって皮下脂肪と内臓脂肪に分類されます。それぞれ特徴は異なりますが、過剰に付着すると健康障害を引き起こす可能性があります。病気を予防するという観点からも、脂肪の種類や特徴に関する知識を身につけておきましょう。

皮下脂肪とは

皮膚の下にある「皮下組織」についていて、手でつまむことができる脂肪のことです。太ももやおしりなどに蓄積しやすく、衝撃の吸収や体温の保持に貢献しています。脂肪として余ったエネルギーを蓄え、必要に応じて放出する役割を担います。

内臓脂肪とは

腸管膜脂肪や大網脂肪などの腹腔内の内臓組織に蓄積された脂肪のことです。皮下脂肪と同様にエネルギーを蓄えますが、貯蔵は一時的であり、脂肪の合成や分解を活発に行うという特徴があります。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満

脂肪が過剰につくと、肥満といわれる状態になります。同じ肥満でも、皮下脂肪が多いタイプを「皮下脂肪型肥満」といい、内臓脂肪が多いタイプは「内臓脂肪型肥満」と呼んで区別します。

皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満

性別で異なる肥満の傾向

皮下脂肪型肥満は、比較的女性に多いという特徴があります。授乳期に皮下脂肪がつきやすくなることも一因と考えられています。また、内臓脂肪型肥満は男性に多く、下半身よりもウエスト周囲に脂肪がつく傾向にあります。肥満の男性でぽっこりとお腹が出ることが多いのは、この内臓脂肪が主たる原因といえます。メタボリックシンドロームの診断基準では、女性の方がウエスト周囲径の基準値が大きくなっています。これは、女性の場合は皮下脂肪がつきやすいという特徴を考慮しているためです。

皮下脂肪と内臓脂肪による健康障害

皮下脂肪や内臓脂肪が付着すると、体型が変わるだけでなく、健康面でも影響が生じます。皮下脂肪が蓄積し体重が増えることによって、関節痛が生じるケースは少なくありません。また、月経異常や睡眠時無呼吸症候群などを合併することもあります。内臓脂肪の蓄積は、生活習慣病と関連があることがわかっています。高血糖・脂質異常・高血圧につながり、動脈硬化を引き起こすリスクが高くなります。 どちらの脂肪が蓄積しても健康障害が生じるリスクは上昇しますが、特に内臓脂肪型肥満は「ハイリスク肥満」として位置づけられています。

「隠れ肥満」に要注意

肥満と定義されているBMIは25ですが、25未満でもお腹が出ている体型の場合は内臓脂肪が多くなっている可能性があります。肥満でないにもかかわらず内臓脂肪が蓄積している状態は、「隠れ肥満症」と呼ばれます。
肥満の判定基準「BMI」

体重が減ると内臓脂肪は減少する

皮下脂肪は一度付着すると減らすのに根気を要します。一方、内臓脂肪は代謝が良い組織なので、比較的減らしやすいので、体重を減らすことで内臓脂肪を減少させることができます。食事や運動を見直し、適正体重を保つことを心がけましょう。

内臓脂肪が多い場合、病気のリスクが高まります。肥満の方はもちろん、肥満ではなくてもウエストまわりが大きい方は注意が必要です。

監修

砂山 聡先生

砂山 聡先生

帝京大学福岡医療技術学部 医療技術学科長/教授(内科学)
水道橋メディカルクリニック院長
順天堂大学医学部卒。同大学医学部循環器内科講師を経て、2005年より現職。専門は生活習慣病および肥満症治療。
医学博士、日本内科学会認定総合内科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本心臓リハビリテーション学会評議員、日本肥満症治療学会評議員。
主な著書として「循環器と病気のしくみ」(日本実業出版社)、「肥満症診療ハンドブック」(医学出版社)など。

肥満・ダイエットの基礎知識

このページの先頭へ