お酒の効用

「アルコール」という話題を取り上げるとき、私たちはアルコールの持つデメリットにばかり注目してしまいがちですが、飲酒はリラックス効果や、会話がはずむ、不安がやわらぐ等のメリットもあります。また、少量のお酒は体にいい、とされています。

Jカーブ効果

アルコールの消費量と死亡率の関係をグラフにすると、少量の飲酒は死亡率を下げて、さらに摂取量が増えるとリスクが上がっていきます。その形からJカーブと呼ばれています。総死亡数・虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病などでこのパターンを見ることができます。このJカーブとの関係が認められているのは先進国の中年男女についてのみとなります。

下記のグラフは、40歳~79歳の日本人男女約11万人を9年~11年追跡した研究の結果で、1日の平均飲酒量と死亡率の関係を表しています。心血管疾患および総死亡、男性のがんでJカーブが見られ、総死亡では男女とも1日平均23g未満(日本酒1合未満)が最もリスクが低いという結果でした。

1日の平均alcohol消費量と死亡率の関係(国外の14疫学研究のメタ分析

Jカーブが見られるのは、総死亡といくつかの疾患に限られています。少量飲酒であっても、高血圧、脂質異常症、脳出血、乳がん(40歳以上)は疾患リスクが上がります。またDタイプ、Eタイプの人のように、ALDH2の働きが弱いか、働かない体質の人はJカーブ効果を享受できない可能性があります。

最新の研究では、飲酒とJカーブを否定する研究も報告されており、注意が必要です。またJカーブは飲酒を勧めるものではありません。

飲みすぎは健康を害することになるということも明らかですので、自分の実際の飲酒量を把握することが大切になります。

参考文献・資料

  • 樋口 進ほか (編). 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル. 社会保険研究所
  • Lin Y et al.(2005) "Alcohol consumption and mortality among middle-aged and elderly Japanese men and women." Ann Epidemiol. 15(8):590-7.
  • GBD 2020 Alcohol Collaborators. (2022) "Population-level risks of alcohol consumption by amount, geography, age, sex, and year: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2020." Lancet. 400(10347):185-235.

知っておきたい飲酒の教養

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