アルコールと睡眠

睡眠には、心身の疲労を回復する働きがあります。健やかな睡眠があってこそ十分な休養をとることができるのです。この睡眠にもアルコールが密接に関わっています。

ナイトキャップの習慣を持っている人は実は日本人に多い

「ナイトキャップ」という言葉を御存知でしょうか。「寝酒」と訳されるものであり、眠りやすくするためにお酒を飲むことを指す言葉です。

実のところ、いくつかの疫学研究では、日本人のうちの30%以上が「週に1回以上眠るためにお酒を飲むことがある」と示されているのです。これは、諸外国の19.4%を多く超える数字です。
反対に、睡眠薬を週1回以上使用する男性は 4.3%、女性 5.9%と示されています。

眠りやすくなるが、睡眠の質は低下する

眠る前に飲むアルコールは、確かに睡眠導入を容易にします。アルコールの持っている鎮静効果によって、眠るまでの時間を短くすることができるのです。つまり、「ベッドに入ってもなかなか眠れない」というような人にとっては、眠る前のアルコールは、一見すると強い味方になるように思われます。
しかしながら、アルコールには、睡眠導入を容易にする以上のデメリットがあるのです。
寝酒をたしなんでいると、その後の睡眠の質が大きく低下します。目が覚めやすくなりますし、さらに一度目が覚めた場合はなかなか眠れなくなってしまいます。
睡眠の質は、日常生活に大きな影響を与えます。睡眠時間が短くなる上、睡眠の質も悪くなり、昼間の活動が妨げられるようになります。

さらに、「眠るためにアルコールを習慣的にとる」という生活をしていた場合、最初は少量でも効果があった人であっても、習慣化することにより「昨日と同じ量」では満足に効果を得られなくなっていきます。この結果として、酒量が増えてしまうことも多いのです。

「睡眠薬はクセになりそう」「たかが眠れないことくらいで病院に行くなんて」と思う人もいるかもしれません。しかし習慣化した寝酒は、アルコール依存症を引き起こしてしまいかねません。早めに専門医に相談しましょう。

参考文献・資料

  • 樋口 進ほか (編). 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル. 社会保険研究所

知っておきたい飲酒の教養

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